僕の実家の近くにある新正(しんまさ)さん。
ガキの頃から食堂といえばここだった。歩いて30秒。お隣組の近さで出前もいつも頼んでた。社会人になって地元を離れてもここの存在は僕にとってはとても重要で、ふと思い出してはふらりと立ち寄る。
中華もナポリタンも冷やし中華も絶品だけれど、中でも超絶なのが麻婆ラーメン。僕の好物リストに麻婆ラーメンがランクされるきっかけになったメニューでもある。
具合のいいあんかけと、トッピングの王様でもあるハーフゆで卵、まっ黄色の麺がほどよく沈んだこの麻婆ラーメンを目の前にすると僕の全てが反応してしまう。そしてこいつと一緒の時はしっかり会話をしながら食べることになる。
美味しいとかいうよりも、ほぼありがとうの世界。
ソウルフードってそういうもんだよね。
僕の胃袋の大事な部分を掴んでしまったメニュー達は、総じて年配の夫婦で営んでいる飲食店がおおくて、その方々がお店をやめてしまえば永遠に食べられなくなってはしまう。それを知っているから僕はこう会話する。
これで最後になるかもな。頑張れよ、俺も頑張るから、と。
既に無くなってしまったキッチン南部駒のスパゲティーカツや、サンドリアの半ちゃん麻婆ラーメンには別れを告げる事が出来なかった僕にとって、この新正の麻婆ラーメンは最後の砦。いつまでも食べたい気持ちでいっぱいだけれど、それは叶わない切実な現実がある。
ハーフゆで卵をどのタイミングで口に入れるか、さては崩してあんかけに混ぜるのか、いつも僕を悩ませる。
そんなこいつに今日も感謝の言葉を捧げた。
美味しさのひと時をありがとう。
麻婆ラーメン 750円

